鎌状赤血球症に対する塩基編集治療を発表:BEACON試験
Base Editing of HBG1 and HBG2 Promoters for Sickle Cell Disease
背景
鎌状赤血球症にはCRISPR-Cas9による遺伝子治療が存在しているが、課題は多い。
アメリカDana-Farber/Boston Children’s Cancer and Blood Disorders CenterのHeeneyら(BEACON)は、登録前の2年間に少なくとも4回の重篤な血管閉塞性クリーゼを経験した12〜35歳の患者31名を対象に、塩基編集技術を用いた新規治療risto-cel(HbF産生を抑制するHBG1・HBG2プロモーター領域の特定塩基を書き換える)の安全性・有効性を検証する第1・2相試験を行った。
一次有効性エンドポイントは、最後の赤血球輸血から60日後以降を開始点として、12ヵ月連続で重度の血管閉塞危機(severe VOC)が発生しないことであった。
結論
平均6.6ヵ月の追跡期間中、HbFの割合は4ヵ月時点で60%を超え、既存のCRISPR-Cas9療法(exa-cel等)の報告値を上回る高い誘導能を示した。標的対立遺伝子の編集率は約67%で安定し、好中球・血小板の生着も迅速(中央値17.5〜19日)であった。解析時点で生着後のVOC再発は認められず、ヘモグロビン値も平均15.5 g/dLまで改善した。一方、1名が移植前処置に関連する特発性肺炎症候群で死亡しており、依然として周術期の管理には厳格さが求められる。
評価
塩基編集が先行CRISPR遺伝子編集と同等以上の治療成績を収め、特に「迅速な生着」と「極めて高いHbF誘導能」において優位性を持つ可能性を示し、鎌状赤血球症でもサラセミアと同様、塩基編集が第一世代遺伝子編集を凌ぐ重要な選択肢となったことを確定した(CRISPR編集でもCas12aを用いたreni-celへの進化が試みられていたが、企業の優先順位変更により開発は停止された)。ただし、未だex vivo遺伝子治療で、また、高度な設備と巨額の費用を要する。患者の大多数は、低・中所得国住民であり、どう医療供給するかは未だ不明である。


