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カテゴリー: | 癌 |
ジャーナル名: | Journal of Clinical Oncology |
年月: | September 2020 |
巻: | 38 |
開始ページ: | 3195 |
【背景】
ATRキナーゼは、DNA損傷に対する細胞の防御に関与し、前臨床研究では、ATRを阻害することで腫瘍の化学療法感受性を高めることが示されている。イギリスRoyal Marsden HospitalのYapらは、標準治療に抵抗性の進行固形がん患者(n=40)において、単剤またはカルボプラチンとの組み合わせでATR阻害剤M6620(VX-970)の安全性を評価する第1相試験を実施した。
【結論】
17名がM6620単剤投与を受け、安全かつ良好に忍容された。第2相での推奨用量は240 mg/m2となった。ATM喪失・ARID1A変異を有する進行大腸がん患者1名では完全奏効が達成され、29ヵ月時点でも奏効が持続していた。M6620とカルボプラチンを受けた23名では、高用量になると毒性が認められ、第2相推奨用量は90 mg/m2となった。プラチナ化学療法不耐・PARP阻害薬抵抗性となったBRCA1変異進行卵巣がん患者1名では部分奏効が達成され、15名では疾患安定となった。
【評価】
DNA損傷は腫瘍発生の根本原因であると同時に、腫瘍細胞を破壊する方法でもある。M6620は、DNA傷害に応答するATRを阻害するファーストインクラス薬剤で、単剤および化学療法との組み合わせを検証したこの第1相試験は、M6620が安全かつ一定の奏効が認められることを明らかにした。すでにberzosertibの名で、ゲムシタビンと組み合わせる第2相試験の結果が発表されている(https://doi.org/10.1016/S1470-2045(20)30180-7)。